ニュージーランド夜景 (出典)TravelNote

30〜40代がいずれ迎える「大量孤独死」の未来 未婚でさまざまな「縁」から離れた人が危ない

菅野 久美子 : フリーライター

 誰にも看取られず、一人部屋で亡くなる孤独死は年間約3万人――。ここ日本ではざっと置き換えると1日当たり約82人、1時間に約3人以上が孤独死で亡くなっているという計算になる。『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』の著者、菅野久美子氏が、現代ニッポンの抱えるこの大きな社会問題のリアルを追った。

ニュージーランド夜景 (出典)TravelNote

■ 新築マンションで死後半年発見されず
 千葉県のマンションに住む60代の男性は、孤独死してから半年間にわたって発見されなかった。男性の傍らには、犬と猫7匹が一緒に息絶えていたという。

 死後半年と聞くと特殊なケースと思われるかもしれないが、高断熱や気密性の高いマンションでは、訪問者でもない限り、長期間遺体が見つからないことも多い。長期間遺体が放置されてきたこともあり、すさまじい光景だったようで、物件を買い付けた不動産屋はその臭いに卒倒しかけたという。

 この男性は、独身で一人暮らし。仕事はしておらず、親の遺産で生活していたようで、貯金は2000万円ほどあり、経済的には特に不自由ない生活を送っていた。

 だが近所や親族との付き合いはなく、人間関係がほとんどなかった。
 その結果として男性は、孤独死という事態を迎えたのである。
 男性が住んでいた3DKのマンションを訪ねると、正面玄関は、ヨーロピアン風の黒いライトが所々に設置されており、クリーム色の重厚な外観は、まさに高級マンションそのものである。

 部屋の前に立つと、室内にこもったムッとするような熱気が玄関に押し寄せてくる。真冬なのに部屋の空気は生ぬるく、注意深く嗅覚を働かせると、甘ったるい腐臭が鼻をつく。部屋の中に充満するほこりっぽい熱気とともに、フワッとしたなんとも言えない異様な臭いが漂っている。不動産屋に聞くと、専門の業者をもってしても、1回の清掃では完全に臭いを消し去ることはできなかったという。

 死体は、長く放置すればするほど、部屋に死臭がこびり付いて消すことが困難になるからだ。
 リビングダイニングには、白と灰色の毛のようなものが付着して、毛にまみれた褐色した塊のようなものが、何カ所にもまだ残留している。

ニュージーランド夜景 (出典)TravelNote

■ 孤独死の犠牲になるペットたち
 男性に飼われていた猫たちは、この部屋を最後まで自由に歩き回りながら、尽きてしまったのだろう。ダイニングの壁の角に寄り添うようにして、小さな毛の塊が付着していた。

 部屋を自由に動き回れたはずの猫たちは、なぜだか、犬たちがケージに入れられていたダイニングという同じ場所で亡くなっていた。ケージに入れられて身動きが取れない犬と互いに寄り添うように、猫たちもまた、ここで果てたのだ。水もなく、食べ物もなく、苦しみと空腹と、もしかしたら暑さもあったかもしれない……。そんなペットたちの苦しみを思うと、心が引き裂かれそうになる。きっと、自分が愛したペットたちのそんな姿は、男性自身も望んだものではなかったはずだ。

 ペットの過剰な多頭飼いは、「アニマルホーダー」と呼ばれており、アメリカでは社会問題となっている。ホーダーとは、ゴミやモノを捨てられずに集める収集癖を持つ人のことを指す。世間では、ゴミ屋敷などが注目されているが、世話ができないほどの多くの動物を飼育してしまう、アニマルホーダーの存在も、深刻な社会問題となっている。

 実際に特殊清掃の現場で、大量にペットの死骸が見つかることは多い。不衛生な環境での過剰な数のペットの飼育は、孤独死の80%を占めると言われるセルフ・ネグレクト(自己放任)の一種ともいえる。ゴミ屋敷に代表されるセルフ・ネグレクトは、緩やかな自殺と呼ばれる。当然ながら、そこにはこの男性のように孤立の問題が根深く潜んでいる。男性と人との繋がりを表すものは、ポストに入っていた郵便物だけで、動物病院、車のディーラー、市の水道局からの督促状のハガキしかなかった。

 この男性の死は、今もなお押し寄せている孤独死大国のある意味、ごくありふれた典型例である。この男性のように、周囲から孤立したゆえの孤独死は決して珍しくはないからだ。

 平成27(2015)年版高齢社会白書によると、60歳以上の高齢者全体で、毎日会話をしている人が9割を超えているのに対して、一人暮らしの男性は約3割、女性は約2割が、2〜3日に一度以下となっている。近所付き合いに関して見てみると一人暮らしで、「つきあいがほとんどない」と回答した女性はわずか6.6%であるのに対して、男性は17.4%と極端に高い。つまり60歳以上の一人暮らしの男性は、近所付き合いや人との交流がなく、頼れる人がいない人が多いというのが現実なのである。

 孤独死の不安を抱えるのは、高齢者だけではない。ゆとり世代、団塊ジュニア世代は、生涯未婚率が高いことから、将来設計から見てもひとごととはいえないのだ。実際、団塊ジュニア世代からは、将来「孤独死するかも」という不安をよく耳にする。
 そんな孤独死が起こるメカニズムについていち早く目をつけたのが、前述の年間の孤独死3万人という数字をはじき出した、民間のシンクタンクのニッセイ基礎研究所だ。

 同研究所の前田展弘研究員らは、「長寿時代の孤立予防に関する総合研究〜孤立死3万人時代を迎えて〜」という研究成果を2014年に発表した。

ニュージーランド夜景 (出典)TravelNote

■ ゆとり、団塊ジュニア世代は危険な予備軍
 この研究によれば、全国では、ゆとり世代が66万人、団塊ジュニア世代で105万人、団塊世代で33万人、75+世代(75歳〜79歳)で36万人が、社会的孤立が疑われる状況にあるというのである。

 この数字を見ると、孤独死は、高齢者だけの問題ではないことが明確となる。むしろ、ゆとり世代や団塊ジュニア、今の30〜40代のほうが数字の上では深刻だという結果にあぜんとせざるをえない。そして、これらの4世代を合わせると、なんと240万人という数字に膨れ上がる。

 しかしこの240万人という数字は、それぞれの世代を一定の年齢として区切って集計したものなので、その間の年齢は含まれていない。
 そこで、このニッセイの調査を基に私自身が独自に行った概算によると、わが国において、約1000万人がさまざまな縁から絶たれ、孤立していると推測されることがわかった。
 この数字が孤独死予備軍だとすれば、日本には"孤独死大国"というなんとも暗すぎる未来が待ち構えていることになる。

 前田研究員は、孤独死の前段階といえる「孤立」の予防に関してカギを握るのは、人と人とのつながり、つまり「縁」だと主張する。この縁には、血縁、社縁(職縁)、地縁、選択縁(趣味などを通じて生まれる縁)など、さまざまな種類がある。そのような縁がなぜ途切れてしまうのだろうか。では、孤独死の前段階ともいえる、「孤立のリスク」を高める要因は何なのか。

 前田研究員らの調査によると、団塊ジュニア世代では、未婚で単身生活者、非正規労働者、無職(専業主婦も含む)の割合が高い。非正規労働は、収入や職場が安定せず、人間関係も流動的になる。いわば”職縁”から切り離された属性が、社会的孤立リスクが高まる要因になると考えられる。

 ゆとり世代でも、未婚の割合が高くパート、アルバイト、無職がほかの世代に比べて高い。ゆとり世代は、現在、親と同居している人も多いが、いずれ親は亡くなることを考えると、属性としては将来の単身者予備軍だといえる。

 そして、団塊ジュニア、ゆとり世代こそが実は最も孤独死に近い世代だといえるだろう。そう、現在の孤独死年間3万人は、「大量孤独死時代」の序章に過ぎないのである。

【出典】東洋経済新報社 2018/12/26 5:10

 
(写真=ユニクエスト提供)
「こういう弔いの形もありなんだなと思いました」
 東京都在住の田中一也さん(仮名・59歳)。おととし、11歳年上のいとこをがんで亡くした際に、通夜や葬儀・告別式をしない“お別れ”を経験した。あっさりした性格だったいとこは生前から、「死んだときは、一切何もしなくていい」と意思表示していた。

 都内の病院で田中さんや家族がいとこをみとった翌日、遺体は病院からいとこが住んでいた千葉市の火葬場へ直行。田中さんを含む近親者7人が火葬場に集まり、火葬を終えた後、近くの葬祭会館で軽く食事をして解散した。ものの1時間半で全てが終わった。

 九州出身の田中さんにとって葬儀といえば、通夜から多くの親戚や知人が集まって、1泊2日で行うイメージ。だからいとこの弔い方には驚いたという。
「読経も戒名もなし。すしは“竹”。ビール中瓶1本でお別れだった。その後、出勤できたぐらいあっさりとしていた」
 一抹の寂しさはあったものの、いとこの闘病生活は1年強におよび、心の準備はできていた。近親者でみとったので、故人と向き合えたという感覚もあった。
「これぐらいシンプルでいいのかもしれない。(通夜、葬儀・告別式をやる一般的な)葬儀で若い僧侶の説法に感動することもないし、通夜の食事もおいしいわけではないし。僕が死んだときも直葬にしてもらおうかと思うこともあります」(田中さん)

 形式的な儀式を極力省いた葬儀のかたち「直葬」がいま、都市部を中心に増えている。直葬とは、故人が亡くなった後、安置所か自宅に遺体を運んで安置し、その後、直接火葬場に移し、荼毘に付すという方法。近親者のみで行う。会葬者を呼んで通夜や告別式を営み、それから火葬する一般的な葬式に比べて、お金もかからない。


「ここ15年ほどで“葬儀はシンプルにしたい”という明確なポリシーを持った人が増加傾向にあります」
 こう話すのは、終活や葬式の相談・施行などを行う「葬儀を考えるNPO東京」代表の高橋進さんだ。かつて直葬は、故人が身寄りのない人や困窮者の場合に、自治体が葬儀費用を賄って行われる方法だった。

「今は、故人の遺志や家族の意向で選ぶ傾向にあります。中には菩提寺があっても直葬を選ぶ人もいるほど。それだけ従来の葬儀のあり方に疑問を持つ人が増えている証しでしょう」(高橋さん)

『葬式は、要らない』などの著書で知られる宗教学者の島田裕巳さんは言う。
「直葬が広がる背景には、死んだ人の扱いはなるべく簡単に済ませるべきという考え方が強まっていることもあります。血縁意識の低下から、“絶対に葬儀に呼ばなくてはいけない人”という存在もなくなってきている。都会のみならず、地方の葬儀も簡素化が進んでいる実態を見れば、そんなに遠くない未来に葬式そのものが消滅する時代が来るかもしれません」

 これまで累計15万件を超える葬儀を担当し、全国で葬儀ブランド「小さなお葬式」を展開するユニクエストによれば、現在、直葬(プラン名「小さな火葬式」)を選ぶ人が4割であるのに対し、「通夜、告別式ともに実施」を選ぶ人が3割、「告別式のみ実施」を選ぶ人が3割と、すでに同社では直葬が主流だ。

「喪主として一度大掛かりな一般葬を経験して、それを疑問に感じたことから、直葬を選ぶケースが増えています。大きな葬式だと会葬者の対応に追われ、ゆっくり故人と向き合う時間もなく、本当にこれで良かったのかと後悔が残ることもあるそうです。そうした方は、次に近親者が亡くなったときには、直葬などシンプルな葬儀を選ばれることが少なくありません」(ユニクエスト広報担当者)

 多くの会葬者を招いてその対応に追われる一般葬と比べて、故人とゆっくり向き合う時間を作ることができるのもメリットなのだ。また、葬儀費用を大幅に抑えられることも利点の一つ。一般葬の場合、平均額は約178万円。一方、直葬は平均15万〜30万円と、6分の1以下に抑えることができる。通夜の飲食費や斎場の式場料、祭壇費用などがかからないためだ。
「通夜の飲食もそれを楽しめるわけではないし、香典返しも果たして本当に必要なのかと、疑問に感じる人が増えるのも当然の流れです」(島田さん)

 では、直葬を選びたい場合、具体的にどうすればいいのか。火葬許可証の申請など役所で行う死後の手続きは遺族がやることも可能だが、遺体の搬送などは荷が重い。儀式を省いたとしても葬儀会社などプロに頼むのが一般的だ。
「棺など必要なものも個別に手配すると手間がかかり、費用も高くつくことが多いので、葬儀社に頼んだほうが安心。悲しみの中、作業に追われるより、故人と向き合う時間を大切にしたほうがいい」(高橋さん)

 直葬を希望する場合、最低限必要な次のような物品やサービスがセットになった一番シンプルなプランを選べばよい。
 遺体の安置場所を確保し、病院や施設など亡くなった場所から、故人の遺体を寝台車にのせ、自宅や一時的な安置場所に搬送する。
 遺体を棺に納め、安置する。法律で定められた時間の死後24時間以上経過してから、火葬場の予約時間に合わせ、霊柩車で火葬場へ出棺する。

 もちろん、物も用意してくれる。遺体を入れる棺、棺用布団、故人に着せる仏衣一式、遺体保冷のためのドライアイス、枕飾り一式、骨壺、そして遺体をのせて移動する寝台車や霊柩車だ。(本誌・松岡かすみ)

※週刊朝日  2019年2月15日号より抜粋

 Family


<人の遺骨> 置き去りか 8割以上「落とし主」が見つからず

 9/9(土) 2:31配信 毎日新聞
遺骨が入った骨箱が花束のそばに放置されていた
京都市東山区の大谷祖廟で、小関勉撮影 (出典)毎日新聞

 ◇14〜16年 203件届けに166件「家族ら捨てた?」

 人の遺骨が2016年までの3年間で、落とし物として全国の警察に計203件届けられ、8割以上は落とし主が見つかっていないことが毎日新聞の調査で分かった。引き取り手のない遺骨は、警察から依頼された寺院などで無縁仏として供養されている。警察当局は、遺骨処理に困って家族らが捨てたケースが大半だとみている。

 調査は全国の警察本部を対象に実施。14〜16年に遺骨の拾得届を受理した件数などを尋ね、47都道府県警から回答を得た。

 昨年は72件の届けがあり、15年は68件、14年が63件だった。全体の82%にあたる166件は落とし主が見つからなかった。最多は大阪で36件。愛知(29件)▽北海道(15件)▽福岡(14件)▽警視庁(13件)−−と続いた。寺院や墓地で拾われたケースが多いが、駅のコインロッカーや図書館に放置されたものもあった。名乗り出た落とし主らに返還されたのは37件だった。

 遺失物法や民法によると、落とし物の保管期間は原則3カ月間で、期間を過ぎると拾得者に所有権が移るが、遺骨の場合は拾い主が権利を放棄し、警察が寺院や自治体に引き取りを依頼することになる。

 浄土真宗の宗祖親鸞の墓所として知られる「大谷祖廟(そびょう)」(京都市)では昨年12月、供花台のそばに遺骨の入った骨箱が放置されたほか、静岡県内にある高速道路のサービスエリアでも昨年8月、骨つぼがごみ箱のそばで見つかった。

 遺骨の放置は死体遺棄罪に問われることもある。この3年間で少なくとも3人が逮捕や書類送検された。警視庁は14年4月、病死した父親の遺骨を以前に住んでいたマンションに放置したとして、40代の男を逮捕。男は「家賃滞納で夜逃げし、遺骨を埋葬する金がなかった」と供述したという。【近藤大介、山口知】

 葬送事情に詳しい茨城キリスト教大の森謙二教授の話 今回の調査結果に驚きを隠せない。家族関係の希薄化とともに、遺骨を守り、先祖を供養する意識が薄れている。都市部では墓が高額になり、納骨先を見つけられないことも影響しているのだろう。少子高齢化により、弔う側は少なくなっているのに死者は増えており、遺骨の放置は今後さらに増えるかもしれない。


 ◇夫の遺骨を寺境内に…遺棄女性の長女「寄り添うべきだった」

 神奈川県藤沢市の日蓮宗「妙福寺」の境内で2007年5月19日朝、白い布に包まれた遺骨が見つかった。その日の午後、「供養して下さい」と書かれた手紙と現金2000円が寺に郵送された。

 差出人は分からなかったが、遺骨とともに火葬許可証が見つかり、県警は同年9月、78歳で病死した夫の遺骨を放置したとして、横浜市内に住んでいた無職の女性(当時73歳)を死体遺棄容疑で書類送検。女性は「お墓を作るお金がなかった」と供述し、不起訴処分になった。

 取材に応じた女性の長女(57)によると、女性の夫は04年に病死し、夫婦で営んでいたエレベーター設置会社を廃業した。女性は生活保護を受けて1人で暮らし、遺骨は横浜市の自宅に置いたままだった。女性はいつも「お墓をどうしたらいいかな」とこぼしていたが、長女は「納骨しない人も多いから家で供養したらいい」と軽く受け流していた。

 遺骨は妙福寺住職の勧めで境内にある永代供養墓に無料で合祀(ごうし)された。事件の約1年半後に亡くなった女性の遺骨も、夫と同じ供養墓に納められている。長女は「母親の悩みにもっと寄り添ってあげるべきだった」と悔しさをにじませた。

 

年金75歳時代の恐怖、家族や友人が骨さえ拾ってくれない!
  • LastUpdate

    2019/6/28

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